リゾート冒険主義
スタートアップは挑戦者を求めています。つねに新しい可能性を試す、そういったエンジニアの「挑戦的」な姿勢は歓迎されるでしょう。しかし、「挑戦しているように見えること」と「本当の挑戦」は違います。
この記事では、スタートアップが技術選定において陥りやすい罠、「リゾート冒険主義」を考えます。
リゾートを冒険する
リゾートを冒険する――スタートアップ特有のギリギリの環境において、この緊張感のなさがどうして生まれるのでしょうか?
一つの原因はエンジニアの経験不足です。挑戦的な態度が歓迎される雰囲気の中、ビジネスとエンジニアリングを接続する論理を構成できない場合に、現実的な制約から距離を置ける「リゾート」を建設してしまうのです。そこで自分の能力をアピールしやすい課題だけに関わるようになる。
もう一つの原因は、関係性の問題で、会社組織が大きな地図を共有できていないことです。短期的な成果を求めがちになっているところで、比較的時間軸の長いエンジニアリングの話は分かりにくい。そこで、「冒険」に聞こえる急進的なトピックを持ち上げて評価してしまうわけです。
エンジニアも会社も、無自覚のうちに、この「リゾート冒険主義」に陥ってしまいます。
リゾートに留まってしまう理由
リゾート建設の理由をもう少し深掘りしてみましょう。
技術戦略を言語化できていない。そして個々の成果物を、戦略にどうアラインしているかという形で説明できない。ここが問題の発端です。次に、短期成果を求められる、少なくとも説明を求めるプレッシャーがかかってくる。このとき、説明の根拠が外部に求められるようになるのです。
技術トレンドやコミュニティの評価、開発者体験など、その種の外部の話題が、あたかもボルトオンで会社の成長エンジンに組み込める部品のように紹介されてきます。けれども、実際にはリゾートの飾りものに過ぎません。
レジュメを派手にしたい誘惑にエンジニアが負けた場合もあるでしょう。ただ、根本原因は組織の在り方です。組織の要求に応えるための最善の行動が「リゾートへの避難」であった、そのような構図といえます。
急進性の背後にあるもの
とがったもの、先進的に見えるものが好まれるのはなぜでしょうか。分かりやすい・説明しやすいというのが第一の理由、それは間違いありません。
ただ、ここで付け加えて指摘しておきたいのが、技術選定についての誤解です。技術選定とは「何かを決めること」だけではありません。
不確実性を評価し、いま決める必要のない領域を見極めること。可逆な判断と不可逆な判断とを分けること。将来の組織に判断を委ねられる自由をアーキテクチャの中につくること。これもまた、技術選定です。
つまり技術選定は、技術的視点からのみできる仕事ではありません。組織力なりカルチャーを必要とします。さもないと、アピールの強い「急進的な決定」だけが現れてくる結果となるでしょう。
真の冒険
スタートアップにとって冒険とは何か――それをあらためて考えなければならないこと自体が不自然です。なぜなら、それはスタートアップがスタートアップである理由そのものだからです。
したがって、「リゾート冒険主義」の回避策は、原点を忘れないということになります。
拍子抜けするような結論ですが、単純なことが難しいのが組織作りだと思います。バーチャルなリゾートもバーチャルな冒険も不要な、真に建設的な組織を目指したいものです。
最後までお読みいただきありがとうございました。