魔法のチョークで描いた窓

期待値としての「定着」を再考する

2025-12-18

採用活動において、我々が候補者に求める「定着」という言葉の真意は何なのだろうか。

「定着しそうにない」というフィードバック

私はこれまでに10回以上の転職を経験してきた。それは裏を返せば、100回を超える「お断り」を受けてきたということでもある。キャリアの中盤以降、不採用の理由としてしばしば受け取ったのが「定着しそうにない」というフィードバックだ。この文脈で語られる「定着」という言葉について、少し掘り下げてみたい。

「定着」を、あえて「執着」や「居座り」という言葉に置き換えてみるとどうだろうか。組織に執着し居座り続ける、そんな兆しの見える候補者をあえて採用することはないはずだ。ではなぜ「定着」ならポジティブなのか。

何に「定着」することを期待しているのか

「定着」という特徴に期待するのは、一般的には、長期的な目標や仕事へのコミットメントを示す能力だろう。安定して貢献してくれる人材を求めるというのは、採用の文脈では自然だ。

しかし、「長期的」「安定して」という時間軸のニュアンスばかりが重視されてはいないだろうか。 先決問題は「貢献できるか」ではないだろうか。長期的に安定して貢献できないとなれば、それがまさに居座りだからだ。

「定着」の裏側に潜む、双方の甘え

「定着」の両サイドには採用側と候補者側、双方の「甘え」が潜んでいるように思う。採用側は、年功序列的な評価軸から脱却できず、人材の成長を無責任に期待してはいないか。候補者側では、自身の市場価値に評価を下すことを避け、会社という場所あるいはポジションに過度な保護を求めてはいないか。

私の経験上、プロダクト開発チームは、リーダーがゴールを語り続けることを怠れば、わずか2週間で瓦解し始める。目標を達成するために必要なのは、定着特性の高い人材を揃えることではない。マネジメントが鮮明なビジョンを示し続けること、同時に個人がプロフェッショナルであり続けること。この両側にある厳しさと、そしてその狭間の緊張感が不可欠なのだ。


かつて私に直接フィードバックをくださった企業の方々は、当時の私の「貢献の再現性」を真摯に評価してくださったのだと理解しています。私の経歴を把握した上で対話の機会をいただけたわけですから。改めて感謝いたします。今後もプロフェッショナルとしての研鑽を積みますので、またどこかでご縁がありましたら、その際はよろしくお願いいたします。