期待値としての「定着」について考える
採用活動において、候補者に求める・求められる「定着」という要件は何なのだろうか。
「定着しそうにない」というフィードバック
私はこれまでに10回以上の転職を経験してきました。それは裏を返せば、100回を超える「お断り」を受けてきたということでもあります。キャリアの中盤以降では、不採用の理由として「定着しそうにない」というフィードバックをしばしば受け取りました。この文脈で言われる「定着」という言葉について、少し掘り下げてみたいと思います。
「定着」を、あえて「執着」や「居座り」という言葉に置き換えてみるとどうでしょう。組織に執着し居座り続ける、そんな兆しが見えた候補者をあえて採用することはないはずです。ではなぜ「定着」ならポジティブなのでしょうか。
何に「定着」することを期待しているのか
「定着」という特徴に期待するのは、一般的には、長期的な目標や仕事へのコミットメントを示す能力でしょう。安定して貢献してくれる人材を求めるというのは、採用の文脈では自然です。
しかし、「長期的」「安定して」という時間軸のニュアンスばかりが重視されてはいないでしょうか。 先決問題は「貢献できるか」だと思います。長期的に安定して「貢献できない」となれば、その状況はまさに居座りだからです。
「定着」の裏側に潜む、双方の甘え
「定着」の両サイドには、採用側と候補者側、双方の「甘え」が潜んでいるように見受けられます。採用側は、年功序列的な評価軸から脱却できず、一方的に人材の成長を期待してはいないでしょうか。候補者側では、自身の市場価値に評価を下すことを避け、会社という場所あるいはポジションに過度な保護を求めていないでしょうか。
私の経験上、プロダクト開発チームは、リーダーがゴールを語り続けることを怠ればわずか2週間で瓦解し始めます。目標を達成するために必要なのは、定着特性の高い人材を揃えることではありません。マネジメントが鮮明なビジョンを示し続けること、同時に個人がプロフェッショナルであり続けること。この両側にある厳しさと、その間に生じる健全な緊張感こそが不可欠なのではないでしょうか。
かつて私に直接フィードバックをくださった企業の方々は、当時の私の「貢献の再現性」を真摯に評価してくださったのだと理解しています。私の経歴を把握した上で対話の機会をいただけたわけですから。改めて感謝いたします。今後もプロフェッショナルとしての研鑽を積みますので、またどこかでご縁がありましたら、その際はよろしくお願いいたします。