心理的安全性とは規律である
心理的安全性と甘えとはやはり区別しなければいけません。
ここだけは安全である、と言う意味
心理的安全性を言うのは「この場では率直に語ってよい」という限定的な安全圏を設けるためであり、基本的に競争の激しい環境下にいることを前提とした条件設定です。
雇用安定性が高いメンバーシップ型雇用のもとでは、すでに基礎的な安全は確保されていることから、「この場は安全」だとあえて言う心理的安全性の差分価値が見えにくくなり、かえって利己的で好ましくない行動の口実にすらなります。
まず危険を共有する必要がある
勝敗が問われているというのは、文化の違いにかかわらず事業組織の本質です。しかしながら、レイオフ等が危険を現実に可視化する環境では緊張感が自動的に生成されるかもしれませんが、メンバーシップ型雇用のもとでは、そのような危険を日々の生活の中で感じ取ることがありません。
この環境下においてもなお、心理的安全性の果実を得たいならば、リーダーは組織に迫る「危険」を明確に言語化し、組織全体に説き続ける必要があります。議論し、学習し、合理的な意思決定がなければ組織は負けるのだ、この純粋な危険を継続的に共有しなければなりません。
異論を手に入れるための仕組み
心理的という用語が情緒的と誤解され、文字通り甘えの理由付けとなるのは典型的な間違いでしょう。当然ながら心理的安全性は免責の仕組みではありません。心理的安全性は責任ある行動を促す一種の「規律」であり、同時に競争に勝つための「合理的な方法」です。例えば、それは「異論の調達コスト」を押し下げ、プロダクト品質の多面的な検証を可能にします。
リーダーが組織に迫る危険(そしてもちろんそれを克服した姿)を説明し全体がそれを共有する中で、規律としての心理的安全性が実現されいれば、組織はより学習を加速させ、最善の意思決定と勝利、そしてイノベーションへの道を開くことができるでしょう。